「CDはなくなる」と言うのが今はオサレなことなのですか?


元ロッキンオン勤務、今はフリーの鹿野淳氏のブログに興味深い内容があった。


「ビル・ゲイツ、『CDとDVDは死滅(=doom)するだろう』と語る」


あらすじはリンク先を見ていただくとして・・・。


iPodの、すさまじい速度での普及と定着を見ていると、確かにCDは近い将来死滅するととらえられても仕方ないのかもしれない。

私はパッケージを売ることによって飯の食い扶持を稼いでいる側の人間なのだけど、だからといって意地でも「CDはなくならない!」と言うつもりはない。元々今の仕事についた動機が「良い音楽を人に伝える仕事をしたい」というものだったから、配信だろうがなんだろうが、そのツールによって誰かがそれまで知らなかったアーティストや音楽に興味を持って貰えればそれでよいと思っている(さらに自分がその手助けを出来たのなら最高)。
でも、鹿野氏の意見の最後の方、「その発言自体に圧倒的な不信感を覚えるのだ。愛がないんだよ、金と成功にしか愛が感じられないんだよ。」のくだりにすごく共感した。
そう、ビルゲイツの発言に何かしっくりこないのはそこに音楽への「愛」が感じられないからであって、ビルゲイツのみならず最近「これからの音楽は配信でしょ?CDなんて古いよ」などと言う知ったかぶりの輩は、素人だろうと玄人だろうと腹が立つ。だって「この意見が最先端?」みたいな、いやらしい裏側しか見えないのだ。その発言に。


自分が小学生だった頃には全盛だった「アナログ盤」は、フォーマットとしては(そして商売としては)全滅こそしてないにしろ、すでに虫の息であることは確か。一部のいわゆる「マニア」向け(もしくはDJ向け)フォーマットになってしまっている。もしかしたらCDも近い将来そうなってしまうかもしれない。でも、実際アナログはまだ死滅してない。そこにニーズがあるから。
実は私もiPodユーザーで、その便利さと軽量性はすごいと思っている。
だけど、それがなんだっていうの?それが音楽を得るための優位性につながるのか?ただの「方法」じゃん。なのに「配信以外の方法は死滅する」と言い切れる神経、ほんと鼻につきます。


商売を基にしたネット業界が巨大な力と独占力を持ちつつある今、音楽に限らず、あらゆる文化を知るキッカケの門戸を狭くすることが今後なきよう、願います。ほんとに。もしネットが全てを独占したら、きっと文化は時間と共にゆるやかに衰退していくと思う。
それこそアナログ盤からCDへとフォーマットが変化して15年程たった今、「CD」が売れない、とよく言われているけど、ホントは「音楽」が売れない時代なのではないかとも思う。
チャートの主流が10〜20代の若者向け音楽ばかりになっていることからも、「CD」というフォーマットについていけなくなって音楽から離れていった大人達がいるからではないだろうか。私達の先輩が聴いていたのは演歌だけではない。映画音楽も、ポップスも、ジャズも、あらゆるものがあらゆる世代に聴かれていた時代があったハズ。つい最近まで。


どうか、音楽が、限られた設備と金と知識を持っている人にしか行き渡らないような時代がきませんように。