「ライフ・イン・ザ・シアター」at世田谷パブリックシアター

市村正親藤原竜也の2人芝居、「ライフ・イン・ザ・シアター」を観て来た。
年老いた俳優と若手俳優の会話を時間軸に沿ってみせていく劇。
年老いた俳優(市村)は、自分の経験と思想を若手俳優(藤原)に会うたび語りかける。新人だった頃の若手は真摯に耳を傾ける。しかし時が経ち、若手に大きな仕事が入ってくるようになるとだんだん年寄りの話がウザくなってくる。それを分かっていても年寄は変わらず話かける。たとえ一方通行でも。


俳優の世界だけではなく、どこにでもある場面。
年寄りの話を若者は聞きたがらない。今の自分に必要ないと思うから。
しかし年寄は伝えたがる。自分が過ごしてきた経験を伝えることで世の中に何か良い影響を残したいから。それをしないと自分の人生がただ時間を浪費しただけのような気がしてしまうからなのだろうか。


この作品は大きな事件や結末は用意されていない。淡々と時が進むだけ。だからこそリアルで面白かった。
しかし一つだけちょっとした事件が起こる。年寄りが、衰えによる大きなミスを舞台で犯した後、楽屋の洗面所で手首を切ってしまう。事故か故意か、ハッキリと明らかにはされないのだけど、おそらく故意。それを悟った若手はいつになく優しく年寄りに寄り添おうとする。
その後、相変わらず年寄りにタメ口で横柄な態度の若手なのだけど、先輩・後輩は関係なく演技者としての対等な関係性になったように見えて、ちょっとゾクっときた(今コレを書きながらその場面を思い出したら、なぜか涙腺が緩みそうなのだが)。
もしかしたら年寄りは最初から対等な立場で演技や人生について語り合いたかっただけなのかもしれない。教える、とか「今の若いものは・・・」なんていう動機ではなく。


なんだか見終わった後、じんわりくる舞台だった。きっと永遠に世界中で続くであろう若者と年寄りの埋められない溝と、ちょっとしたヒントを見せられた気がした。


市村さんはさすがにベテランの余裕で客席を笑わせていて、ホント面白い人だなーと思って安心して見れた。小技とかタイミングとかうまいなと。
藤原は、わざと?ってな位に脱ぐ場面(正しくは着替える場面)が多く、何度も肉体美を披露。もしかしてファンサービスなの?彼の舞台では蜷川さんがらみの声を張ってセリフを機関銃のように喋ってるような役しかしらないので、今回のような自然体の演技を生で見れて興味深かった。若いのにスゴイ役者だね、つくづく。なんかプライベートが想像つかない位、演じることが体に染み付いてるように見える。十代の頃から蜷川さんに鍛えられてたからかな〜?